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渋谷区の成功事例から学ぶ!自治体との官民共創にあたって議員と連携するインパクト

作成者: issues運営事務局|Jan 21, 2026 11:45:41 PM

行政の壁を破る3つのカギ(課題、予算、議員)

企業の皆様が、画期的なソリューションを携えて自治体との連携を試みる際、しばしば「行政の壁」を感じたことはありませんか?

特に、意思決定のスピード感や、たとえば実証実験で成果が出たにもかかわらず、次年度の「継続事業化(予算化)」に至らないケースは、多くの事業責任者にとってのお悩みとして相談を受けることがあります。

しかし、その課題の本質は、以下の3つにあるとえ言えます。

  • 行政特有の構造的な仕組み・ルール
  • 民間企業との健全な「コミュニケーション」
  • 連携のタイミング

本記事は、元渋谷区議の中村たけし氏が講師となり登壇した勉強会の内容を基に、自治体との共創(BtoG)を成功させるためのロードマップを、パブリックアフェアーズの専門家の視点から解説します。

鍵となるのは、「自治体における社外取締役」ともいえる「議員」の方々との、透明性の高い、健全な連携です

 

1.サービスの「売り込み」から「課題解決力の提示」へ

自治体連携の第一歩は、企業側のマインドセットの転換です。民間企業側は「プロダクトをどんどん紹介して、導入してもらおう」と営業しがちですが、これでは行政側との間に溝が生まれてしまいます

行政職員の方が最も重視しているのは、「住民にとっての今の地域課題をどうやったら解決できるか」という点です。

元渋谷区議会議員の中村たけし氏は、この点を強調しています。

「自治体の職員の頭の中の構造は、住民にとっての今の地域課題をどうやったら解決できるかというところに、もしそのソリューションがはまるのであれば、民間の力を借りてそれを採用して住民サービスの向上に利用していきたいというのが前提(中略)
「地域課題が何なのか?」というところからの出発点というのが、やっぱり一番重要

まずは、自社製品を地域課題の「課題解決ツール」として紹介することが重要です

例えば、渋谷区で推進されたデマンド交通の実証実験の事例では、単にアプリベースの移動サービスを売り込むのではなく、「鉄道やバス路線がない公共交通空白地をどう解消するか」という地域課題の文脈からアプローチされました

この「課題ファースト」の姿勢こそが、官民共創を前に進める健全な土台となります。

 

2.健全な事業化プロセス:「実証実験」から「予算獲得」へのロードマップ

自治体が新しい事業に踏み切る際、特にインフラに近い、あるいは金額規模が大きいソリューションについては、「失敗できない」という大前提が存在します。そのため、いきなり数億円規模の予算化をして本格導入するのは非常に難しく、二の足を踏むのが自然な反応です。

継続事業化を実現するためには、リスクを最小限に抑えつつ、確かな実績を積むための段階的なアプローチが求められます。

小さく始めて実績を作る

デマンド交通の事例では、「まずパイロット的に、ある一エリアで一時的な期間、一時的な対象者に対して実証事業をしてみる」という推進の仕方が取られました。

この実証実験の段階では、行政側の予算の硬直性を考慮し、民間側が製品の無償拠出などで実績を積むことが、自治体にとって取り組みやすい方法であるとされています

行政の予算サイクルを味方につける

実証実験を無償で実施した場合、その後の「予算化」が最大の壁となります。自治体の予算は、次年度予算(4月1日開始)の承認がその年の2月・3月議会で行われます。

このプロセスを逆算すると、予算編成のピークである9月〜12月に提案しても、次年度予算には間に合わない可能性が高くなります

4〜6月の年度の始まりの時には、例えば7〜9月頃に実証実験として無償で取り組むべきことを提案していき、秋から始まる翌年度の予算編成を念頭に動いていく必要があります。翌年度の本格導入のために逆算してマイルストーンをクリアしていくのが大切です。

企業は年度の早い段階で実証実験の提案を行い、その結果を持って次年度予算化に間に合うよう、計画的に動くことが不可欠です。

 

3.透明性を確保した「議員連携」でプロセスを加速させる

官民共創のプロセスをスピーディかつ健全に進める上で、議員の方々の役割は計り知れません。
議員は、首長や職員が進めたい政策や事業に対しても、予算承認の権限を根拠に行政組織へのガバナンスを利かせられる「自治体の社外取締役」のような存在です

「共創のパートナー」として議員の方と連携するメリットは、大きく分けて2点あります。

①情報の非対称性を解消し、キーパーソンと連携する

民間企業が自治体に直接アプローチしても、窓口の担当者クラスとの対話に留まり、事業化の意思決定権を持つ「キーパーソン(課長・部長クラス)」にリーチできないという悩みをよく聞きます。

しかし、地域課題の解決という公益目的のもと、議員が間に入ることで透明性の高いプロセスで、キーパーソンとの連携が実現します。

「議員が間に入って取り持ちながら、しかるべき立ち位置のしかるべき所管課の方と打ち合わせをするというのは、必ず必要なプロセスになってくる。
いきなりキーマン(課長や部長など)が出てきて、本来2、3ヶ月かかるようなプロセスを適切な方に適切なタイミングで、スピーディに説明する機会を作れる」

議員との連携は、担当課の事業検討や財政の予算確保を進めるための「議会質問での検討、後押し」や「キーパーソンとの三者面談の設定」といったプロセスを可能にします。

②庁内の「縦割り」を越えて他部署にも広げられる

自治体職員は2〜3年で異動があり、基本的には所属している課の課題に注力します。これに対し、議員は平均勤続年数が長く、基本的にどの部署に対してもアプローチできるため、部署間の「縦割り」を越えた、横展開のつなぎ役になっていただけます

見守りカメラ付き自販機の事例では、企業側は当初「防犯カメラ」として安全対策部署へのアプローチを望みました。しかし、安全対策部署は予算に限りがあることが課題でした。

そこで、議員の知見をフル活用し、アプローチ先を「商店街を取りまとめている産業振興課」や「町内会をまとめている地域振興課」へと提案先を戦略的に転換しました。これは、自販機設置が、安全対策だけでなく、地域経済や自治活動の活性化にもつながるという多角的な視点を提供し、「B2G2B」という新たなビジネスモデルの選定にも寄与しました。

このように、議員は庁内の予算状況やネットワークを踏まえ、民間企業に対して「半分中の人の立場として」最適な戦略を共創するパートナーとなり得るのです。

 

住民・行政・企業みんなが喜ぶ官民共創の実現へ

企業が自治体と連携し、実証実験を継続事業化へと導くことは、決して「裏技」や「コネ」によるものではありません。

それは、行政の仕組み(予算サイクル、法令、組織構造)を深く理解し、地域課題解決という公益目的を主語に、透明性とスピード感を持って民主主義のプロセスを推進することに他なりません

民間企業の皆様のソリューションが、適切なタイミングで適切な行政パートナーに届くことで、最終的には「住民サービスの向上」や「地域課題の解決」という三方良しの成果が生まれます

課題解決への強い思いを持った民間企業と、自治体の組織構造や課題解決にコミットする「議員」の方々が連携することは、今後の持続可能な地域社会の実現に不可欠です

本レポートでご紹介しきれなかった詳細(官民共創が得意な議員の特徴、行政を動かすポイント、B2G2Bモデルの詳細なプロセスなど)については、ウェビナーのアーカイブ動画で中村氏が深く解説しています。

 

さらに、自社の事業をどのように自治体連携につなげるか具体的なアドバイスが欲しい方向けに、議員経験者が同席する無料個別コンサルティングも実施しております。ぜひ、この機会に専門家の知見をご活用ください。