自治体へのサービス導入や連携協定の締結を目指す企業の多くが「提案への反応は良かったのに話が全然進まない」という壁にぶつかります。
これには自治体ならではの構造的な理由があります。それを理解せずに提案を続けても成果は出ません。
本記事では、自治体との官民共創で直面する3つの壁と、議員との連携でどう乗り越えられるのかを解説します。
職員が新しい取り組みに消極的なのは、個人の問題ではありません。構造的な理由があるのです。
自治体は住民から強制的に集めた税金で運営されており、失敗は許されません。そして失敗しないために新しいことには慎重にならざるを得ないのです。
さらに、職員数は減り続ける一方で仕事は増え続けています。常に忙しい状態では新しいことに手を出せません。
あなたが話している現場の職員が乗り気でも、意思決定者の担当課長を説得できなければそこで止まります。
担当課長と合意形成できたら、関係する部署との合意形成も必要です。どの課も新しいことには慎重であり、ここに高いハードルがあります。
さらに予算が必要な取り組みならば、財政課を説得できなければ実現できません。
そして連携協定や大規模な予算をつけようと思うと、首長・副首長・各部局長など幹部層との合意形成も必要です。
自治体ではこのように合意が必要な相手がたくさんあり、どこか一つでも説得に失敗すれば全体が止まってしまいます。
そうこうしているうちに、毎年4月に全職員の1/3〜1/2が別の部署に異動するため、話が立ち消えになってしまうことも珍しくありません。
議員は自治体における社外取締役のような存在です。
議会の承認がないと、自治体は1円も予算を使えません。この強い権限を元に、議員は行政組織にガバナンスを効かせる立場です。
議員は選挙で自分を選んでくれた住民の課題を解決したい気持ちが強いです。そのため職員とは逆に、新しい取り組みに対して前向きな人が多いのです。
民間企業への提案でも、新しいことに前向きな役員を巻き込めば進みやすいですよね?自治体も同じです。
まずは議員と面談して、あなたの地域課題の解決に対する想いや、その課題解決にあなたの会社のサービスがどう役に立つのかを説明します。議員を「ビジョンを一緒に実現する仲間」として巻き込むのです。
提案内容に合った部署はどこか、その中で新しいことに前向きな人が決裁権を持つ部署はどこか、他に合意を取っておくべき部署はどこか――こうした情報は外部の企業には見えづらいですが、議員は知っています。
そして担当課・関係部署・財政当局・上層部など、それぞれのキーマン毎に関心事は異なります。議員は日頃からキーマンとやりとりしているので、相手の関心事に合わせて提案して個別に説得してくれるのです。
議員が自治体の社外取締役ならば、議会は自治体における取締役会のような場です。民間企業でも取締役会で提案された内容は優先的な経営課題として検討されますよね?それと同じイメージを持つとわかりやすいと思います。
具体的には、議員が議会質問で取り上げると行政は必ずなにかしらの回答をしなければなりません。担当課は非常に多くの案件を抱えていますが、答弁作成の過程で他の案件よりもあなたの取り組む地域課題についての検討が優先的に進んでいくのです。
また議会には全ての部署の幹部職員が一同に会しています。あなたの取り組む地域課題の重要性について上層部に一斉にインプットすることもできるのです。
議員は執行を担当しない立場ですので、最後は担当課とのやりとりになります。詳細を詰めて事業化を進め、地域の課題解決につなげていきましょう。
ただし、議員連携には注意点もあります。
議員の仕事は地域の課題を解決することで、関われるのは事業化や予算確保まで。入札や業者選定には関われませんので、ここは自社の努力で勝ち取る必要があります。
また進め方を間違えると、政治的にセンシティブな案件だと思われ、かえって進みにくくなることも。issuesには多くの議員経験者が在籍しているので、適切な形で議員と連携できるよう支援しています。
私達issuesの企業様との商談では、この記事の内容をさらに深く説明することに使っています。
また商談には議員経験者が参加し、実際に手掛けた官民共創の案件を例に、普段は表に出ない舞台裏をお伝え。また議員視点から商談相手の企業ならば自治体とどういう座組・戦略で官民共創を進めていくべきかについてもアドバイスしています。
自治体との官民共創に取り組んでいる企業にとって、経営戦略・営業戦略を考える上でも参考になる内容です。
だからこそ、経営層や事業責任者の方にも参加いただきたいのです。「営業を受ける場」ではなく「官民共創の知識を得て戦略を議論する場」として使っていただければと思います。