2026年7月2日(木)、IVS2026京都の公式サイドイベントとして「自治体と語る|Startup×政策で挑む社会課題解決」を開催しました(主催:株式会社issues)。
会場には、Startup・事業会社の担当者、自治体職員、現職・元職の議員、政策人材、投資家など、官民共創に関心を持つ多様なプレイヤーが集結。奈良県川西町の小澤晃広町長と大阪府泉大津市の南出賢一市長という二人の現職首長を迎えたトークセッション、そして実践者による第2セッションとネットワーキングを通じて、「行政だけでも、民間だけでも解けない社会課題に、どう手を組んで向き合うか」を語り合う一夜となりました。
本記事では、当日の会場の様子をレポートしながら、企業・行政・議員の皆さまが明日から使える「官民共創の実践ヒント」を凝縮してお届けします。
▼ オープニングの様子。趣旨共有と乾杯でイベントがスタート
| イベント名 | 自治体と語る|Startup×政策で挑む社会課題解決 |
| 開催日時 | 2026年7月2日(木)19:00〜21:30 |
| 主催 | 株式会社issues |
| 形式 | トークセッション+ネットワーキング |
| 参加者 | Startup、事業会社、自治体関係者、政策人材、議員、投資家、支援機関 など |
オープニングでは、issues代表の廣田達宣より、本イベントの趣旨を共有しました。
少子高齢化、教育、人材確保、医療・福祉、防災――地域が向き合う課題は複雑化し、行政だけ、企業だけ、一つの立場だけで解決することが難しくなっています。だからこそ、自治体が持つ現場・制度・地域との接点と、企業やStartupが持つ技術・事業開発力・スピードを掛け合わせることが必要です。
「どんなサービスを売るか、ではなく、どんな地域課題を前に進めたいかから会話を始めてほしい」――このメッセージとともに乾杯し、イベントがスタートしました。
▼ メイントーク「二人の首長と語る!官民共創で社会課題を解決するには?」
セッションの導入として、モデレーターの廣田から、前職のNPO法人フローレンス時代に東京都文京区と立ち上げた「こども宅食」プロジェクト(2017年〜)を紹介しました。
経済的に厳しい状況のご家庭に定期的に食品を届け、配送スタッフが親子の異変に気づいたら深刻化する前にソーシャルワークへつなぐ――この事業の最大の壁は「本当に支援が必要な方に情報が届かない」ことでした。突破口になったのが、官と民の役割分担です。
※立ち上げ時、LINE経由の申込は「想定の3倍」に達したことが公表されています(申込総数458件のうちLINEが351件。出典: フローレンス プレスリリース 2017年10月16日)
▼ 行政の「届ける力」と民間の「仕組みをつくる力」の掛け算(イメージ図)
「役所でしかできないことと、民間でしかできないことがコラボレーションした結果として、これまで支援が届いていなかった人たちに3倍届くようになった」(廣田)
文京区での実績はその後、国への政策提案につながり、令和2年度第二次補正予算での「支援対象児童等見守り強化事業」(31億円)の創設など、国の事業化に結実しました。「こども宅食」の取り組みは2024年11月時点で47都道府県・239団体に広がっています(出典: こども宅食応援団 2024年11月27日)。
奈良県川西町の小澤町長は、民間出身(デベロッパー)の視点から、行政運営の実感を率直に語りました。
「行政に入って一番難しいと感じたのは、民間ほど専門性のある職員がいないこと。何かを変えたいと思ったとき、パートナーとして伴走してくださる民間の力を借りて課題解決に取り組んできた」(小澤町長)
紹介された事例は、いずれも「現場の困りごと」起点です。
▼ 町の現場の困りごとに、民間の仕組みを掛け合わせる(イメージ図)
「行政は何かを変えることが不得意。でも『やりづらいな』で終わらせず、会話をして『こうすれば導入できるのでは』という接点を一緒に見つける。このスタートが切れれば、一気に自治体に広がる」(小澤町長)
大阪府泉大津市は、官民連携のワンストップ窓口「官民連携デスク」を設け、50件を超える連携協定を積み重ねてきた自治体です(出典: 泉大津市官民連携デスク)。南出市長のミッションは明快です。
▼ 行政がフィールドを、民間がノウハウを持ち寄る(イメージ図)
「泉大津から、日本と世界の共通課題の解決モデルを官民連携・市民共創でゼロから作る。うちがフィールドを提供します。その代わりノウハウは提供してください」(南出市長)
「資金調達の前に、まず大義。なぜ、何のためにやるのか。民間企業の提案と自治体が考える大義が本当に一致したときに、物事は動く」(南出市長)
セッション終盤には、これから官民共創に取り組む実践者へのアドバイスを、お二人から3つずついただきました。
▼ 両首長から実践者へ、6つのアドバイス(イメージ図)
南出市長(泉大津市)
小澤町長(川西町)
また、会場からの「予算や公平性の壁をどう越えるか」という問いには、「リビングラボ・実証実験の枠組みで小さく試し、評価項目を事前に設計して結果を出す」「小さくてもいいから、まず1つ実績をつくる。実績は次の扉を開く通行証になる」と、実務に踏み込んだ回答が交わされました。
▼ 実践者へのアドバイスや会場からの質問にも、率直に答えていただいた両首長
後半は、政策・企業それぞれの立場の実践者によるトークセッション。宇陀市議会議員の勝井太郎氏と、人材サービス企業で自治体連携を経験した田中智樹氏が登壇しました。
▼ 第2セッションの様子
行政の信頼×民間のリーチ――田中氏が紹介したのは、ある県のIT人材移住促進の事例。行政単独の募集では届かなかった層に、民間企業が持つIT人材データベースと企画力を掛け合わせることで応募が生まれ、実際の移住にまでつながりました。
「人材サービスの会社なのに、移住という新しい企画を立ち上げて取り組んだ。それぐらい、自治体ごとに違う課題に本気で入り込まないと官民連携はなし得ない」(田中氏)
「行政の一番面倒くさいことを、こちらがやる」――勝井氏は、少人数の保健師で市全域をカバーせざるを得ない保健指導の現場に、大学・企業と連携したデータ活用の仕組みを持ち込み、ワークショップからわずか数週間で事業化にこぎつけた経験を披露。
「座組みを全部作った上で持っていく。営業は相手に合わせるものなのに、なぜか相手が『官』になるとそれが疎かになる。徹底して相手に合わせることが、提案が通る一番の近道」(勝井氏・要旨)
公平性の課題には「連携協定」という打ち手があること、その際は評価項目の設計が肝になることなど、行政・議会側の内側を知る立場ならではの実践知が共有されました。
当日は3回のネットワーキングタイムを設け、トークを「聞いて終わり」にせず、参加者同士が地域課題・関心テーマを起点に対話する時間を重視しました。首長・議員と企業担当者が直接語り合い、個別の紹介や「次はこの課題について話そう」という具体的な約束が各所で生まれていたのが印象的でした。
▼ ネットワーキングの様子。首長・議員と企業担当者が立場を越えて語り合った
イベントを通じて繰り返し語られたのは、次のシンプルな事実です。
▼ 官と民が重なるところに、共創の余地がある(イメージ図)
なお、当日はここに書ききれない実名・実数を交えた率直な議論が、クローズドな場だからこそ交わされました。本記事でお伝えできるのはそのエッセンスまでですが、こうした本音で語り合える官民共創の場を、issuesはこれからもつくり続けます。
issuesは、企業・自治体・政策人材・地域のプレイヤーをつなぎ、社会課題の解決に向けた対話と実装の接点をつくる官民共創のハブとして、場づくりと伴走を続けていきます。
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