コンテンツまでスキップ

「実証実験止まり」からの脱却。現役議員が教える、自治体予算獲得へ導く「共創」の道筋

自治体営業や自治体との取り組みをしていきたいと考えている企業の方で、以下のような悩みを抱えてはいませんか?

  • 「自治体へのトライアル的な導入を実現したものの、なかなかその後、予算化に至らなかった」
  • 「そもそも自治体との取り組みに実績を作りたいが、どうやったらいいのかわからない」。

実は、その悩み、行政特有の「コミュニケーションの回路」や「制度活用のタイミング」といった構造的な問題である可能性があります。

本稿では、現役の市議会議員であり、官民連携の推進に注力し複数の事例を作ってきた吉野ゆうと氏(愛知県日進市議会議員)と、issues取締役の富樫氏によるウェビナーの内容を元に、民間企業が自治体との連携を「単なる営業活動」から「地域課題を共に解決する共創プロセス」へと転換するための具体的な戦略を解説していきます。

スライド|25.11.21_吉野さん講師


 

議員と連携をして壁を乗り越える

自治体職員の皆さんは、日々多忙な業務のなかで、住民サービス向上と行政の効率化のために必死に努力されています。企業様が感じている連携の「ハードルの高さ」は、行政特有の予算や法令といった「仕組み」に起因することが大半です。

私たちが目指すべきは、この構造的課題を乗り越え、企業と行政が対等なパートナーとして連携を深める「共創」です。その鍵を握っているのが、議会という民主主義のプロセスを理解している、議員の方々と健全な形で連携することです。

スライド|25.11.7_中村たけしさん講師 (1)

議員は、「民間企業でいうところの社外取締役のような役割を担う存在」だと言い換えることができ、「予算の最終承認という意味で、決定的な権限を持つキーパーソ」と位置づけられます。まずは、この「行政の仕組みを深く理解しているパートナー」との関係構築から始めることが鍵となるのです。

継続的な予算化へ繋げる三つの戦略

ウェビナーでは、自治体連携を「接点づくり」「提案」「予算確保」「仕様策定」「入札」という流れで捉え、特に「接点づくり」から「予算化」へつなげる方法論が議論されました。

1.ハードルが低い「共創の入り口」を多様に設計する

いきなり数百万、数千万円といった大きな予算を獲得することは、実績が無い新しいサービスの場合、非常にハードルが高いとされています。

そこでまず推奨されるのが、リスクを抑えた形での「共創の入り口」の設計です。

Google Slide Generator Presentation 2025.12.12

(1)無償トライアルと実証実験
予算を自治体内で確保せず、企業負担で一旦実験的に取り組む方法です。ここで重要なのは、実証実験は「とりあえずやってみる」ものではなく、「予算化をする前提」で行政職員は取り組むということです。

(2)連携協定
災害時の物品・場所の提供から、金融教育の推進など、幅広い分野で官民連携のパートナーシップを構築する手段です。
吉野氏は、日進市とミキハウス社との乳幼児用防災備蓄品に関する連携協定の事例を紹介し、議員が「ご縁をつなげ」、地域課題の解決という共通認識のもとでスムーズに話が進んだ経緯を共有されています。

(3)企業版ふるさと納税(物納版・人材版の活用)
法人税の一部を自治体の事業に活用できるこの仕組みは、自治体との接点を作る手段として非常に有効です。特に近年は、金銭だけでなく、自社の製品やサービス(例:ロボット、タブレット)を寄付する「物納版」や、自社の社員を派遣する「人材版」の活用も可能であり、税制上のメリットを活かしつつ、企業として「導入実績」を作ることができます。

2.「社外取締役」としての議員と、健全な政策提言を行う

企業が自治体連携を進める際、行政職員の方へアプローチすることが多いです。ここで吉野議員は、議員との連携のメリットを明確に指摘しています。

議員は、様々な課(子ども、高齢者、環境など)とコミュニケーションをとっており、企業からの提案に対して、「これは子育て支援だな」「今市内ではこういうフェーズだから、こっちの方と調整する方がスムーズだ」と、行政内部の情報を基に「交通整理」を行うことができます。

議員と話をすると、もう少しレイヤーの高いところと話ができます。かつ議員が直接担当課の意思決定できるような方とお話しすることもできるので、「企業と行政職員とのやりとり」というところもスムーズになるかなと思います。

また、自治体職員の異動は2〜3年に1回はありますが、議員の平均在職年数は長く、議員との接点は長期的な関係になります。議会質問という「公式な場」で議論がなされれば、その答弁は議事録に残り、職員が異動しても「引き継がれていく」という透明性の高いメリットがあります。

3.「コスト削減」と「アウトカム(成果)」を定量化し、予算化の壁を破る

無料トライアルや実証実験から継続的な予算化へつなげる上で、最も重要なのは「エビデンス(証拠)」の設計です。吉野氏は、予算確保につながるエビデンスとして、大きく二つの視点を挙げています。

①コスト削減の可視化:財政課を納得させるデータ
DX系サービス導入の事例では、

「職員の労働時間がどれくらい削減したか、もっと言うと残業時間が圧縮されるのにどれくらい貢献したかという数字を出すことができればその人件費分を積算し、予算要求に繋げやすい」

と解説されています。

また、小学校の水泳授業を民間スイミングスクールに委託する実証実験の事例では、「小学校の修繕費、プールの修繕費がかからない、プールの水道代がかからない」といった、従来見過ごされがちだった「実は費用がかからない」部分を可視化することで、予算化につながるケースを紹介しました。

②社会的アウトカム(成果)の定量化:住民サービス向上を訴求
自治体は住民の幸福度向上が主眼です。不登校支援にマインクラフトを活用した事例では、「子供たちの中で円滑にコミュニケーションが進むようになり」、実際に大会エントリーや発表の練習など「子どもたちの成長の機会を作ることができた」という成果を具体的な数字や定性情報で可視化することが、予算要求につながったと言います。

行政職員の方も予算化のための「逆算の視点」を持って実証実験に臨んでいるため、企業側から「どうやってデータを取れるのか」の多様なパターンを提示することで、職員も「この数字示せれば庁内で提案しやすそうだ」と判断しやすくなると強調しています。


官民「共創」で実現する「三方良し」の未来

自治体への提案活動は、決して「行政を攻略する」ためのものではなく、「地域課題解決」という公益目的を主語とする「共創」の取り組みであるべきです。

吉野議員は、企業に向けて、行政サービスだけでは解決できない幅広い社会課題がある中で、官民の力を合わせることが重要であると強調しました。

社会的な困りごとを抱えている方の負担を減らす、あるいはより便利にするといった視点で、『課題の発見』と『アイデア』をセットでご提案いただく。そうすることで自治体も取り組みやすくなり、社会自体がより良くなっていく。そうした未来の一助になればと思います。

企業様の製品やサービスが、自治体との共創を通じて、自社の発展だけでなく、「住民サービス向上」や「地域課題解決」につながる「三方良し」の取り組みとなるよう、本レポートが皆様の勇気の一助となれば幸いです。


本レポートで触れられなかった詳細な戦略やノウハウについては、ぜひウェビナーアーカイブをご視聴いただけます。

 

自社の事業で自治体への本格導入に向けて意見交換をしたい方向けに、議員経験者が同席する無料個別コンサルティングも実施しております。ぜひ、この機会に専門家の知見をご活用ください。