自治体営業や自治体との取り組みをしていきたいと考えている企業の方で、以下のような悩みを抱えてはいませんか? 「自治体へのトライアル的な導入を実現したものの、なかなかその後、予算化に至らなかった」...
【官民共創成功のカギ】行政の課題抽出から議員連携まで企業が実践すべき5つの方法
1. 企業の熱意はなぜ「行政の壁」に阻まれるのか
民間企業が熱意を持って自治体との連携を進めようとしても、提案自体が行政の窓口で停滞しすることがあります。
「検討します」というような言葉とともに、案件が進まなくなった経験は多くの方がしてきたことと思います。
行政職員は多忙な業務の中で、住民サービス向上に努めていますが、進展がない原因は、組織特有の「コミュニケーションの回路」や「単年度予算制」などの構造的な課題にあります。本勉強会では、元渋谷区議会議員の中村たけし氏と、官民連携の専門家である株式会社issuesの富樫氏が登壇し、これらの課題を乗り越え、行政と「共創」するための具体的な戦略について議論を交わしました。

2. 自治体ビジネスの「大前提」と真の課題特定
営業の主語を「住民」に変える
まず、中村氏は民間企業が自治体と向き合う上での大前提を指摘しました。
元区議という立場で組織の内外を見てきた中村氏は、「自治体が全てのサービスを自前で提供し続けるのはリソース的、金銭的に非常に難しい」と言います。そのため、官民連携が求めらるます。
この大前提があるからこそ、企業側の営業スタンスの転換が必要です。
自治体の存在意義は、「最小の経費で最大の福祉を提供する」と地方自治法に規定されています。企業は、営業の出発点として「住民目線」でプラスになる提案をする必要がある。
民間企業は、「数字を達成するために製品を売る」という視点から、つい売り手目線になりがちです。
「売り手目線でアプローチしてしまうと、自治体側は自分たちの課題を解決してくれるというよりも、単なる営業活動だと感じてしまいます。」中村氏は警鐘を鳴らします。
また、課題には職員が既に認識している「顕在化している課題」と、まだ把握できていない「未認識の課題」が存在します。
中村氏は、真のビジネスチャンスは後者にあると指摘します。
「自治体の職員自体が課題として考えていないもの。それは何か商品を売りたいとか、ソリューションを提供して自治体と連携をしてビジネス伸ばしたいという人にとって、本当のチャンス」
企業は、競合よりも一歩先を行くために、「提案を通じて気づきを自治体に与え、本質的な課題を抽出する」という立ち位置を取るべきです。
3. 意思決定層へ届ける2つの方法
現場の窓口職員へのアプローチだけでは、「新しいことに対して提案を聞いたら、すぐに上席に話をしてスムーズに進んでいくのはなかなか難しい」という課題があります。
そこで中村氏は、意思決定層に到達するための「効率的な物事の進め方」として、透明性の高い2つの方法を紹介しました。
①行政が公表する課題情報を活用する
近年、官民連携の部署を中心に、自治体が部署横断的な課題をホームページで公表するところが増えています。
「そこに掲載された課題を確認し、自社の提案が解決策となることを伝えると、担当部署の適切な立場の方と面談する機会が得やすくなります。」
これにより、然るべき立場の方との面談機会を得やすくなると言います。
②住民の代表たる「議員」との連携
もう一つの強力な方法は、議員との連携です。
議員は行政組織における「社外取締役」のような立ち位置であり、住民の意見を行政に伝える役割を担っています。
また、議員は日頃から情報収集に、熱心に動いており、いかに「住民サービスを向上させていくか」についてもアンテナを張っています。
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さらに、中村氏は議員連携のメリットを強調します。
「議員は、どちらかというと有権者である住民のご意向をいつも聞いている。それを行政に対して伝えていくという役割も担っている」
この役割があるため、「本質的な課題は、自治体職員の方よりも議員の方が持っているパターンはすごく多い」とのことです。
また、健全なアプローチのポイントとして、企業は「製品の売り込み」ではなく「課題解決の相談」という立場で議員にアプローチすることがポイントだと話します。
どんな議員にアプローチすべきかについては、例えば、議員の「選挙広報や本人のホームページ」に掲載されている公約や活動テーマをリサーチし、自社のソリューションと関連性の高い議員を選ぶことが重要です。
4. 提案の質を高めるロジックと、予算編成の壁を破るタイミング
「職員の労力」を代替する徹底的なリサーチ
提案の質を高める上で、企業側が徹底したリサーチを行い、行政職員の「労力」を代替することが極めて重要です。
中村氏は、AI見守りセンサーの提案を例に、具体的なリサーチの必要性を説明しました。
「例えば、高齢者が何人で、どれくらいが独居状態かなど、詳細な情報をリサーチしておくと、提案がスムーズに進みますし関係部署につなぎやすいです。」
職員が提案を内部で検討・承認を得る際、必要な「課題のエビデンス収集」を企業側が肩代わりすることで、「向こうも課題解決のために来てるんだと思ってもらえる」マインドが生まれると指摘しました。
住民に直接的なメリットが見えづらい、間接的な提案こそ「住民目線」への転換
庁内DXや働き方改革など、住民に直接的なメリットが見えづらいソリューションであっても、最終的な主語は「住民」に置かなければなりません。
中村氏が解説した、間接的なメリットを住民目線に転換するロジックは以下の2点です。

- 財政面からのロジック
- アナログ業務のDX化は、労働コスト(税金が原資)の削減につながります。その削減分について、「削減できたコスト分を他の福祉や教育のサービスを手厚くするのに使いますよという提案」を構成することで、住民にとってのメリットを明確に示します。
- アナログ業務のDX化は、労働コスト(税金が原資)の削減につながります。その削減分について、「削減できたコスト分を他の福祉や教育のサービスを手厚くするのに使いますよという提案」を構成することで、住民にとってのメリットを明確に示します。
- リソース面からのロジック
- DXによって生まれた職員の「人というリソース」を、「絶対にアナログでやり続けなければいけない分野の福祉サービスだや、教育サービス」に振り分けるロジックです。
これにより、住民から見た時に「この自治体はもっともっと住民に寄り添ったサービスを提供してくれる、という満足度に変わる」と結びつけられます。
予算の壁を突破する「最重要タイミング」
行政は「単年度制」であり、事業計画と予算は年度開始(4月1日)の時点でほぼ組まれてしまいます。そのため、課題とソリューションが完璧に合致していても、予算がなければ提案は通りません。
中村氏は、新規事業を翌年度に滑り込ませるための最重要タイミングについて解説しました。
「タイミング的に1月〜3月から始めるのであれば、もう翌々年度を見据えなくてはいけない。
(翌年の)4月からの事業開始に間に合うギリギリのタイミングは、議員が首長に予算要望を出す時期です。住民の代表としている議員から要望自治体の首長当てに出す時期が必ずあり、これがだいたい10~11月ぐらい」
この時期までに連携する議員の方には、ソリューションを深く理解してもらい、要望として予算案に組み込んでもらう「政策提言」を行うことが、来年度予算獲得への最善策となります。
5. 結論:官民共創によって実現する「三方良し」
自治体営業、すなわち官民共創の活動は、自社の製品を「売り込む」ことではなく、地域課題を「共創によって解決する」ためのプロセスです。
中村氏と富樫氏による本勉強会では、健全なプロセスを活用しながら、徹底した住民目線に立つことで、行政職員や議員からの信頼を得る方法が示されました。
貴社のソリューションが行政の効率化(コスト・リソースの削減)に貢献し、その結果生まれたリソースが住民サービスの手厚さとして還元されることは、企業の利益、行政の効率化、住民サービスの向上という「三方良し」を実現する取り組みです。

この透明で健全なアプローチこそが、貴社を長期的な「地域課題解決のパートナー」へと昇華させる鍵となります。
本レポートでご紹介しきれなかった詳細(具体的な事例を交えた課題の抽出の仕方、議員との連携のポイントなど)については、ウェビナーのアーカイブ動画で中村氏が深く解説しています。
さらに、自社の事業をどのように自治体連携につなげるか具体的なアドバイスが欲しい方向けに、議員経験者が同席する無料個別コンサルティングも実施しております。ぜひ、この機会に専門家の知見をご活用ください。