企業が抱える課題と、行政職員へのリスペクト...
自治体連携の壁を突破する、行政・議員・民間による「ワンチーム」の作り方
「地域課題を解決したい」その想いに、公務員も、議員も、そして民間団体・企業も、本来は垣根がありません。
現実は、民間(企業・NPO・財団法人など)が自治体へ提案に行くと、以下のような壁に阻まれることがあります。
-
「窓口が分からない」
-
「前例がない」
-
「予算がない」
活動内容やサービスの質には自信があるのに、なぜ話が前に進まないのか。
もちろん、行政職員の方々が新しいことを拒んでいるわけではありません。「公平・公正」を重んじ、市民の税金を預かる立場として、慎重にならざるを得ないという、行政特有の「守りの構造」があるからです。
その構造を理解し、尊重した上で、官民共創を実現するにはどうすればいいのか?
その答えは、「地方議員と一緒になって官民共創を進める」というアプローチにありました。
株式会社issuesは、「地域課題の解決」という共通のゴールに向けて、民間団体・企業と地方議員が連携し、自治体との官民共創を進めるためのサポートを行っています。今回は、福岡県筑後市で実現した「公益財団法人 国際文化会館 政策起業家プラットフォーム(以下PEP)×issues」の事例から、信頼と対話に基づく官民共創をご紹介します。

.png?width=960&height=540&name=%E8%AD%B0%E5%93%A1%E3%81%A8%E9%80%A3%E6%90%BA%E3%81%97%E3%81%A6%E8%A1%8C%E3%81%86%E5%AE%98%E6%B0%91%E5%85%B1%E5%89%B5%20~%E7%AD%91%E5%BE%8C%E5%B8%82%E3%81%A7%E3%81%AE%E5%B0%8E%E5%85%A5%E4%BA%8B%E4%BE%8B~2026.01.22_PEPx%E5%B7%9D%E5%8F%A3%E8%AD%B0%E5%93%A1%20(1).png)
「売り込み」ではなく「相談」から始まった
今回の事例となるPEPとは、「政策起業家の育成・
その活動の一環として、2025年度は若者向けに政策に関するワークショップや出張授業にも取り組んでいました。これらの活動は三菱みらい育成財団からの助成を受けており、学校・自治体側の費用負担なしで実施できる体制が整っていました。一方で、活動拠点が関東であるPEPにとって、関東圏外の実施先の開拓は予想以上のハードルでした。
そこで、issuesを通してPEPの蛯谷さんと、ある共通の課題意識を持つ筑後市議会の川口樹里議員との意見交換の場をセッティングしました。
川口議員は、令和6年9月の議会一般質問で「子どもの意見表明権・参加する権利の保障」を掲げ、庁舎建設への子どもの意見反映を行政に問いかけていました。行政の初期反応は消極的でしたが、川口議員は粘り強く、行政へ働きかけを続けていました。こうした背景を持つ議員との「対話」を通じて、筑後市での取り組みはスタートしたのです。
PEP蛯谷さんは、当時の心境をこう語ります。
「どうしても提案する側/される側の構図になりがちでしたが、話してみると『社会を良くしたい』という思いは議員も行政も一緒だと感じました。(議員の方と)仲間になれた気がします」
「地域を良くする同志」として議員とフラットに話し合う。このスタンスが重要です。
議員は行政と民間団体・企業との「橋渡し役」になる
「議員連携」というと、議員の権限を使って行政に無理を通すような誤解をされることがありますが、本質は全く逆です。議員は、多忙な行政職員の方々が「動きやすい環境」を作るための、最強のパートナーになり得るのです。
実際に、川口議員は「どの部署と連携したらよいか?」という点についてこう語ります。
「まずは私(川口議員)と信頼関係が構築できており、協力してくれる担当課長から当たってみる」
議員は、庁内の人間関係や、各部署が今どんな課題を抱えているか(タイミング)を深く理解しています。だからこそ、「誰に」「どう」相談すれば、職員の方々の負担にならずに話が進むかを知っているのです。
本事例では、キーパーソンとなる担当課長へ「相談」を持ちかけたことで、話はスムーズに進みました。
単なる「出張授業」が「庁舎建設の目玉事業」に化けた理由
PEPが当初持っていた提案はシンプルに「若者向けの出張授業(ワークショップ)をしたい」というものでした。
しかし、単に「授業をさせてください」と学校や教育委員会へ提案をしても、様々な理由から受け入れが難しいケースが多いのが実情です。
ここで川口議員の「調整力(翻訳)」が発揮されました。川口議員は、市が当時進めていた「新庁舎建設」という一大プロジェクトに着目し、こう提案したのです。
「新しい庁舎を作るにあたり、市は『子どもや若者の意見を取り入れたい』と考えている。PEPさんのワークショップを、その意見吸い上げの場として位置付けてはどうか?」
PEPの「やりたいこと(出張授業)」が、自治体の「やるべきこと(庁舎建設への市民参加)」に見事に書き換わった瞬間です。
-1.png?width=960&height=540&name=%E8%AD%B0%E5%93%A1%E3%81%A8%E9%80%A3%E6%90%BA%E3%81%97%E3%81%A6%E8%A1%8C%E3%81%86%E5%AE%98%E6%B0%91%E5%85%B1%E5%89%B5%20~%E7%AD%91%E5%BE%8C%E5%B8%82%E3%81%A7%E3%81%AE%E5%B0%8E%E5%85%A5%E4%BA%8B%E4%BE%8B~2026.01.22_PEPx%E5%B7%9D%E5%8F%A3%E8%AD%B0%E5%93%A1%20(1)-1.png)
この「文脈の変換」があったからこそ、担当課長は「それなら必要だ」と判断し、実施が決まったのです。
職員の意識を変えた「共創」の瞬間
このプロジェクトのハイライトは、事業実施(ワークショップ)の前後で、行政職員の方々の姿勢が劇的に変わったことです。
PEPとのワークショップを企画する以前は、担当課の方々は「市役所に子どもは来ないから、意見を聞く必要性は低いのでは?」と、やや慎重な反応だったそうです。
しかし、PEPと川口議員が連携し、実際にワークショップを開催して子どもたちの生の声を聞いた後、その空気は一変しました。
「ワークショップの実施後は『(子どもたちの意見を)どう反映するか』という前向きな姿勢に行政側も変わりました」(川口議員)
外部の民間団体と、内部を知る議員、そして実務を担う職員が「ワンチーム」になったことで、現場の意識変容が起きたのです。
議員連携がもたらす「3つのメリット」
本事例では、半年間で「3自治体での開催決定」という成果が出ています。なぜ、短期間でここまでの成果が出たのか。その理由は3つあります。
- キーマンへの最短ルートがわかる
- 議員が橋渡し役になり「決定権者(担当課長)」と直接対話が実現しました。
- 提案が「自治体の文脈」に翻訳される
- 民間団体側の「提案」ではなく、議員が以前から議会で取り上げていた「地域課題の解決策」として提案することで、行政側の納得感が格段に高まりました。
- 議員による事前の地ならしができていた
- 行政職員にとって、新しい取り組みには「理由」が必要です。議員による事前の議会質問などが、職員が動くための「土壌」となっていました。
.png?width=960&height=540&name=%E8%AD%B0%E5%93%A1%E3%81%A8%E9%80%A3%E6%90%BA%E3%81%97%E3%81%A6%E8%A1%8C%E3%81%86%E5%AE%98%E6%B0%91%E5%85%B1%E5%89%B5%20~%E7%AD%91%E5%BE%8C%E5%B8%82%E3%81%A7%E3%81%AE%E5%B0%8E%E5%85%A5%E4%BA%8B%E4%BE%8B~2026.01.22_PEPx%E5%B7%9D%E5%8F%A3%E8%AD%B0%E5%93%A1%20(3).png)
信頼関係を築く「具体的な会話」は動画で
「議員連携」は、単なる売り込みの手段ではありません。民間団体や企業にとって議員は「課題解決のパートナー」であり、議員にとって民間団体・企業は「地域を良くする心強い味方」です。
本ウェビナーのアーカイブ動画では、現場のリアルなやり取りが公開されています。
- 蛯谷さんは、具体的にどのようにして川口議員と「同志」の関係を築いたのか?
- 川口議員のように行政職員と一緒になって動いてくれる議員の特徴とは?
- 何人の議員リードを創出し、いかにして議員と連携したのか?
自治体アプローチの手法の一つとして、議員と連携したアプローチをこの機会にぜひインプットしてみてはいかがでしょうか。